サイレント・ウェイ:コーチの気まぐれ研究日誌:So-net blog
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サイレント・ウェイ [英語教育]

【本Blogはアーカイヴです。新情報は… 『サイレント・ウェイ 【英語科教授法】』 「新・コーチの気まぐれ研究日誌」でよろしくご愛読下さいm(_ _)m】

エジプト生まれの心理学者かつ数学者であるカレブ・ガッテーニィオによる教授法で、沈黙的教授法(The Silent Way)と名付けられているように教師はほとんどしゃべらず、事実この方法では教師は小さな棒の様な道具を操るだけで90%以上沈黙している。その光景は第三者の目には実に、奇異に感じられ非科学的とすらうつるかも知れない。初めての参加者は授業の空気が従来のものと大きく異なることを感じるだろう。教師も生徒も一度言ったことを繰り返さない。教師も生徒の誤りを訂正しない。それどころか褒めることも叱ることもしない。生徒には競争的な雰囲気が全くない。それでいて生徒のの言語活動は活発であり、学習の速さは驚異的である。

サイレントウェイは従前の教授法観を一変させた。したがってこれまでの教授法を固守する人には理解しにくく、非科学的な教授法と映る。それはこの教授法が従来のものと比べてかなり異質な要素を持っているからである。その最たるものものは、従来の教授法は言語について、記号的側面からアプローチしてきたこと対し、サイレントウェイは人間学という面から、アプローチしている面にある。特に利用する教材としては、絵や文字や動作を用いるということではなくて、主にロッドという、意味のない小さな棒を使っていることである。

ガッテーニィオの教授法の特質を振り返るには彼の出で立ちを知らなければならない。彼は実に多彩な経歴の持ち主である。1911年エジプト・アレクサンドリアに生まれ、1937年にスイスのバーゼル大学で数学の博士号を取り、その後ロンドン大学で数学・教育学・心理学を講じ、1952年にはフランスのリール大学で心理学博士号を取り、やがてアメリカに渡って1969年出版社の社長になり、教材を出版したりしている。サイレントウェイやそれに必要な一連の教具は彼の55年間の言語学習の体験の成果として生じたものである。

1963年にガッテーニィオのTeaching Foreign Language in Schools: the Silent Way が初めて出版されたが、その本の存在がほとんど知られる事はなかった。それが理解されある程度知られるようになったのは10年の歳月がたち、さらに日本で知られるようになったのは1970年代半ばからである。1976年にステヴィックによるMemory, Meaning and Method が出版され、1979年に『新しい外国語教育―サイレント・ウェイのすすめ』として翻訳され急激に知られるようになった。

サイレントウェイはダイレクト系や聴覚系メソッドと同様にその発想を母国語学習理論から得ているが、その実際論的方法は根本的に異なっている。それ以前のダイレクト系や聴覚系の教授法がすなわち言語の記号的側面たる言語発達的側面に注目していることに対し、サイレントウエイは幼児の心理学的側面に着目しているのである。

従来、英語の提示量および反復練習量が多ければ多いほど英語力がつくと考えられてきた、しかしサイレントウェイはその考え方を一変させた。教師が沈黙すればするほどよいと考えるのである。しかし沈黙すればするほど英語の提示量が減り、反復練習を経なければそれだけ反復利用が経る。従来の方法と相反するもので、現場の教師はどちらが良いのか惑うであろう。これはひとつには学習者の個性にも関係する。一回の音声的提示で正確に音を把握できるものもいれば、何度も提示されないと把握できないものもいる。ガッテーニィオの考え方は、授業の姿勢としては望ましいが、実際には、現実に即して臨機応変に行うべきであろう。

サイレントウェイは、東洋的な、「沈黙」というものを基調とした発想から生じたものだ。寡黙を好む日本人には適しているといえるかも知れない。しかし実際には講習を受けないと授業で応用することは困難である。ただしこの方法は現在の日本の英語教育に対して多くの示唆に富んでいると思われるので、まとめてみる。

①教師と生徒、生徒同士の人間関係の円満さが問われる。これは教授-学習の関係の基本である。
②教師がしゃべりすぎると生徒の学習活動を阻害する。
③教師が助力を与え過ぎると生徒の自律的学習が遅れる。
④沈黙させ注意を集中させると1度の音声的提示でもよく記憶される。
⑤ロッドの代わりに、指や他の道具を使用してもある程度効果が期待できる。


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